長期優良住宅とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」として国から認定を受けた住宅のことです。
別の言い方をすれば、「将来に渡り長く住み続けられる、と国から認められた住宅」です。
国から認定され、長期優良住宅であることのお墨付きをもらえると、「確認書」を受け取ることができます。
確認書を受け取ることで税制面でメリットが生まれます。
国は、建設業界から排出される二酸化炭素を削減するために税の優遇措置を施すことで、長期優良住宅の普及を目指しているからです。
長期優良住宅として認定されることで、税制面でメリットが生まれますが、認定を受けるためには費用が高いなどのデメリットも存在します。
メリットとデメリットを比較して、申請する必要があるか、ないか、を考えるためにも、下記にそれぞれメリットとデメリットをまとめました。
- 住宅ローン【フラット35】Sで、適用金利が0.25%引き下げられる
- 住宅ローン減税制度の控除対象限度額が5,000万円に引き上げられる
- 地震保険料の割引きが受けられる
- 不動産取得税が減税される
- 固定資産税の減税期間が延長される
- 登記の登録免許税の税率が引き下げられる
- 補助金を受けられる場合がある(中小工務店等で建てた場合)
- 手数料が高い
- 申請に時間がかかる
- 維持保全計画に従ってメンテナンスを行わなければならない
- 増築・リフォーム・売買・相続で申請が必要になる
長期優良住宅を取得することのデメリットとしては、着工前に申請しなければならないので工事が始まるまでに時間がかかることと、初期投資として申請費用が発生することです。
また、メンテナンスを記録する手間や、増築・リフォーム・売買・相続などで再度申請が必要になることがデメリットです。
しかし、長期的に考えると税制面での優遇措置によりデメリットに見合うメリットを受け取ることができます。
概要が把握できたところで、詳しくメリットとデメリットを確認していきましょう。
メリット
- 住宅ローン【フラット35】Sで、適用金利が0.25%引き下げられる
- 住宅ローン減税制度の控除対象限度額が5,000万円に引き上げられる
- 地震保険料の割引きが受けられる
- 不動産取得税が減税される
- 固定資産税の減税期間が延長される
- 登記の登録免許税の税率が引き下げられる
- 補助金を受けられる場合がある(中小工務店等で建てた場合)
住宅ローン【フラット35】Sで、適用金利が0.25%引き下げられる
【フラット35】Sを利用する場合です。
フラット35以外(民間金融機関)の住宅ローンで金利の優遇が受けられるかは、事前に利用する銀行に確認した方が良いでしょう。
【フラット35】は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する、最長35年の全期間固定金利住宅ローンですが、長期優良住宅として認定された場合は、【フラット35】の借入金利を一定期間(5年または10年)引き下げてくれる制度です。
引き下げ率は、年 マイナス 0.25%です。
【フラット35】の借入金利を一定期間0.25%引き下げてくれる商品が【フラット35】Sと呼ばれます。
金利が引き下げられるのは当初の5年または10年だけですが、元金均等返済方式であれば、まだ残高が多い返済当初期間の金利が低くなるので、返済当初期間の返済額負担が軽くなります。
借入条件にもよりますが、0.25%の金利引き下げで、返済総額は30〜70万円ほど少なくなります。
住宅ローン減税制度の控除対象限度額が5,000万円に引き上げられる住宅ローン減税制度は、年末の住宅ローン残高もしくは住宅の取得対価のうち少ない金額の1%が10年間、所得税・住民税から控除される制度です。
住宅ローン減税制度の控除対象限度額は一般住宅の場合、3,000万円です。
長期優良住宅に認定されると、住宅ローン減税制度の控除対象限度額が5,000万円に引き上げられます。
長期優良住宅の認定を受け、長期優良住宅に係る書類(技術的審査適合証、認定通知書)を提出すると、建物の免震・耐震性能に応じて地震保険の割引を受けることができます。地震保険に加入する際は、これらの割引について忘れずに確認するようにしましょう。
長期優良住宅の認定等級の「耐震等級2」以上を満たしていれば、優遇措置が受けられます。
耐震等級2の割引率は20%です。
耐震等級3(最高等級)の割引率は50%です。
※具体的な保険料額は、お住まいになる地域や住宅の構造によって決められています。
保険を申し込む際は、割引が適用されていることを確認しましょう。
不動産取得税とは、土地や建物を買ったときに一度だけ課税される税金です。
令和6年3月31日までの新築に対し、長期優良住宅として認定を受けた住宅は不動産取得税の特例の軽減措置があります。
床面積が50㎡以上240㎡以下の長期優良住宅で、不動産を購入した際にかかる不動産取得税の控除額が、一般住宅より100万円増えます。
一般住宅の控除額は1,200万円までですが、長期優良住宅は1,300万円まで控除されます。
固定資産税評価額が同じ3,000万円として、不動産取得税を計算してみます。
不動産取得税は3%です。
不動産取得税=(固定資産税評価額 – 1,200万円)× 3%
=(3,000万円 – 1,200万円)× 3% = 54万円
不動産取得税=(固定資産税評価額 – 1,300万円)× 3%
=(3,000万円 – 1,300万円)× 3% = 51万円
固定資産税評価額が同じ3,000万円として、不動産取得税を計算してみると、一般住宅では54万円、長期優良住宅では51万円となるので、3万円の差が生じます。
固定資産税の減税期間が延長される固定資産税とは、土地や建物を所有していれば毎年課税される税金です。
新築住宅を購入した場合に、固定資産税が2分の1に減税される期間が、通常の住宅よりも2年間、延長されます。
通常の減税される期間は、一戸建てで3年間、マンションなどで5年間です。
一方、長期優良住宅の場合、一戸建てが5年間、マンションが7年間に延長されます。
ただし、住宅面積が50㎡以上280㎡以下、居住部分の床面積が全体の2分の1以上などの条件があります。詳しい条件については、手続き先である市町村で事前に確認しておきましょう。
なお、固定資産税の特例措置は5年間(マンション等の場合は7年間)の措置であり、6年目(マンション等の場合は8年目)から固定資産税の額が”元に戻る”ことになります。
つまり、6年目になると減税期間が終わるので、それ以前より高い金額を支払うことになりますが、固定資産税が”増税”されるわけではありませんので頭に入れておきましょう。
登録免許税とは、不動産の取得時に行う「登記」の際に必要となる費用(法務局に支払う手数料)です。
登記とは、購入した土地建物の所有権が自分にあることを公にわかるように公示することを言います。
購入した土地建物を登記して所有権が自分にあることを公示することで、その土地建物の権利に銀行が抵当権をつけて、住宅ローンを貸してくれます。
逆の言い方をすれば、登記せずに購入した土地建物の所有権が自分にあることを公に公示できなければ、銀行が抵当権をつけられないで、住宅ローンを借りることができません。
不動産のケースによって異なりますが、所有権保存登記や所有権移転登記などがあり、それぞれの登記には登録免許税がかかります。
そして、長期優良住宅であれば、住宅を購入した際の所有権保存登記や所有権移転登記にかかる登録免許税の税率が引き下げられます。
一般住宅の場合、保存登記が0.15%、移転登記で0.3%(一戸建て)です。
一方、長期優良住宅では保存登記0.1%、移転登記0.2%(一戸建て)、移転登記0.1%(マンション)となっており、それぞれ減税措置を受けられます。
| 保存登記 | 0.15% → 0.1% |
| 移転登記 | 0.30% → 0.2%(一戸建て) 0.1%(マンション) |
たとえば住宅の評価額が5,000万円のとき、一般の保存登記にかかる登録免許税は5,000万円×0.15%=7万5,000円です。
一方、長期優良住宅は5,000万円×0.1%=5万円です。
2万5千円の節約になります。
- その者が主として居住の用に供する家屋であること
- 住宅の新築または引渡しから1年以内に登記をすること
- 床面積が50㎡以上であること
- 市町村が発行する住宅用家屋証明書を取得していること
- 長期優良住宅の認定通知書を取得していること
正確にいえば、建主に対して補助金が手渡されるわけではなく、施工会社に補助がされるので、建主は間接的に補助を受けることになります。
その政策が「地域型住宅グリーン化事業」です。
地域型住宅グリーン化事業とは、国土交通省が推進する住宅政策のひとつで、国土交通省の採択を受けたグループが建てた省エネルギー性や耐久性などに優れた新築・中古の木造住宅に対して補助金が交付される制度です。
グループとは、原木供給・製材・建材・設計・施工などの地域の中小工務店を中心にした事業者で構成された集団のことを指します。
地域型住宅グリーン化事業では、建築を依頼する発注者に対して補助が行われるのではなく、採択を受けたグループに対して補助が行われるという点が最大のポイントとなります。ですので、発注者は、グループを通じて間接的に補助を受けることになります。
長期優良住宅はこの制度の「長寿命型」に該当し、補助対象経費の一割以内の額で、住戸一戸あたり最大110万円が支給されます。
また、建物に地元の木材を利用すると、さらに加算金が出る場合もあります。
なお、中小工務店ならどこでも対象というわけではなく、「事業の採択を受けたグループに属する中小工務店」で建てた長期優良住宅が対象なのでご注意ください。
採択を受けたグループは以下のページで確認できます。
» 地域型住宅グリーン化事業 令和3年度採択グループ一覧
デメリット
- 手数料が高い
- 申請に時間がかかる
- 維持保全計画に従ってメンテナンスを行わなければならない
- 増築・リフォーム・売買・相続で申請が必要になる
手数料が高い
申請書類は専門的で技術的な内容なので、住宅販売業者や設計事務所などが作成した後に、建主に代理して申請します。
そのため審査を受診するための費用は「申請手数料」に加え、代理申請のための「代理手数料」がかかります。
| 「長期優良住宅のお墨付きを得るための費用」 |
| 費用 = 申請手数料 + 代理手数料 |
申請手数料は建物の構造や階数、審査項目によって料金が異なりますが、木造2階建てであれば大体10〜20万円くらいです。
代理手数料は、住宅販売業者や設計事務所が申請書類・申請図面を作成する費用と、申請を代理する費用を合算したものです。相場は20〜60万円で、会社の技術力や営業力、顧客への貢献度などの要因によって価格に大きな差がでます。
ですので、費用は概算として30〜80万円を事前の資金計画に含めるのを忘れないようにしましょう。
申請に時間がかかる申請は着工前に行う必要があるため、申請しない一般住宅の場合よりも着工までに時間がかかります。
通常の住宅よりも2週間~1カ月は着工まで時間を要します。
長期優良住宅に認定されるためには、所管行政庁の審査を経て認定を得る必要があるからです。
長期優良住宅の認定を受けた住宅は、入居後も認定された維持保全計画に従ってメンテナンスを行い、メンテナンスの履歴を記録しておく必要があります。
メンテナンスを怠り、所管行政庁からメンテナンス状況の調査が入った際に、「報告をしない」「虚偽の報告をする」等の対応をすると、30万円以下の罰金に処せられることがありますし、税や補助金などの優遇を受けていた場合にその分の金額の返還を求められることもあるので注意が必要です。
とはいえ、長期優良住宅にかかわらず、住宅を長く快適に住める状態に保つためには、建物のメンテナンスは不可欠です。メンテナンスを怠ることを避けられる、という意味では、むしろ良いことだと解釈できます。
増築・リフォーム・売買・相続で申請が必要になる増築やリフォームを行う際は、あらかじめ所管行政庁に対して申請し、「計画変更の認定」を受ける必要があります。
増築・リフォームの計画内容についても、長期優良住宅の基準に合わせる必要があるからです。
また、売買や相続をする時も、所管行政庁の承認が必要です。承認されると新しい所有者に維持保全計画の内容が引き継がれますので、新しい所有者がその計画に基づいてメンテナンスを行なっていくことになります。
建物を建てる時だけでなく、増築する場合や売る時にも申請が必要になるなんて正直面倒ですよね。
冒頭でもお伝えしましたが、長期優良住宅を取得することのデメリットは着工前に申請しなければならないので工事が始まるまで時間がかかり、初期投資として申請費用が発生することです。また、メンテナンスを記録する手間や、増築・リフォーム・売買・相続などで再度申請が必要になることもデメリットです。
しかし、長期的に考えると税制面での優遇措置によりデメリットに見合うメリットを受け取ることができます。
住宅ローンを「フラット」で借りないのであれば、住宅ローン金利の優遇がありませんし、また、地震保険に入らないようであれば地震保険の割引も考慮する必要がないので、長期優良住宅を申請したとしても得られるメリットが最大化されません。
この記事が資金計画を立てる際の一助になれば幸いです。

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