建築

【決定版】家を建てるときの「工法」のメリット・デメリットをわかりやすく総まとめ

「一戸建てを建てるときは、どんな建て方 ( 工法こうほう ) があるのか知りたい」
「家を建てる予定だが、どの工法を選べばいいか迷ってる」

この記事はそんな悩みを持った方へ向けて書いています。

こんにちは。
僕は宮城県の亘理町で「一級建築士事務所さざんか」という設計事務所を営んでいる、代表の佐々木ノブオと申します。

今回は建築士としての視点で、家を建てるうえで損することがないように家の建て方 ( 工法 ) の特徴やメリットとデメリットを紹介しようと思います。

一戸建て住宅を建てるときは、ついつい間取りやデザインに気を取られがちですが、工法について考えることも大切な要素の一つです。

「工法」とは家を建てるための工事の方法のことで、”工法の違い”によって使用する材料や構造・間取りが大きく異なります。
さまざまな工法がありますが、ある特定の工法が全ての点において優れているわけでは無く、それぞれメリットとデメリットを持っている点に注意が必要です。

日本では木造住宅の割合が多く、現在でも一戸建て住宅の約6割を「木造住宅」が占めています。
建物の構造材料に木材を使用しない非木造住宅の割合は「鉄筋・鉄骨コンクリート造」で約3.2割、「鉄骨造」が約0.8割,「ブロック造やレンガ造」が0.03割という状況です。
政府統計 平成20年住宅・土地統計調査(5年ごと)

政府統計 平成20年住宅・土地統計調査を元に作成

政府統計調査による住宅の分類方法を踏まえ、一戸建ての主流になっている工法を下記の4つに分類しました。

  1. 木造軸組工法
  2. 枠組壁工法
  3. 鉄筋コンクリート工法
  4. 鉄骨工法

この分類に基づいて工法の特徴とメリット・デメリットを紹介します。

戸建て住宅を購入・新築するときは、それぞれの工法の特徴を把握することでご自身のライフスタイルに合ったマイホームを手に入れることができると思います。
この記事があなたの素敵なマイホームづくりの一助となれば幸いです。

それではまいりましょう。

木造軸組工法について

特徴

木造軸組もくぞうじくぐみ工法は、建物を支える主な構造材料である柱やはりに木材を用いる工法です。

昔から伝わる工法なので「在来ざいらい工法」や「在来軸組ざいらいじくぐみ工法」とも呼ばれます。

ちなみに「在来」の意味については「これまで普通にあったこと」です。

ざい-らい【在来】
これまで普通にあったこと。ありきたり。「―の方式」

広辞苑 ( 岩波書店 · 広辞苑第六版 )

「これまで普通に木材で建物をくられてきた工法」なので、木造軸組工法の「木造軸組」の部分を「在来」に置き換えて『在来工法』と呼んだり、「木造」の部分を「在来」に置き換えて『在来軸組工法』と呼ぶわけですね。

呼び方はさまざまありますが、ここでは「木造軸組工法」に統一することにします。

以下が木造軸組工法のメリットです。

ココがいいね!  メリット
  1. 幅の広い窓をつくることができる
  2. 大地震に対しても安全性が高い
  3. 木の質感を感じることができる
メリット -1. 幅の広い窓をつくることができる

木造軸組工法は構成材料である柱や梁、筋かいすじかいを組み合わせて建物の骨組み ( 軸組じくぐみ ) をつくるため、建物を「線」で支える構造と言えます。

建物を「線」で支えることで、幅の広い窓をつくることができるというメリットがあります。

メリット -3. 大地震に対しても安全性が高い

「昔ながらの工法だから、地震に対して弱いんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、2000年の建築基準法の改正で、柱や梁、筋かいなどの接合部分には建築用の金物を適切に使って補強することが法令化されたので耐震性能も向上しており、大地震に対しても安全性の高い工法となってます。
なお、最近では木材の耐震性能や耐火性能が再評価されていて、木造の高層ビルが建てられています。
東京都 中央区 日本橋に国内最大・最高層の木造ビル

メリット -4. 木の質感を感じることができる

「柱や梁をみせるデザイン」にすることで木の質感を感じ取ることができる空間をつくることができます。

個人的な意見ですが、柱や梁を魅せるデザインにしないのであれば、木造軸組工法の良さを引き出すことができないので、別の工法で家を建ててもいいように感じています。
柱や梁を壁紙などで隠すことなく、建物の骨組みが直接目で見ることができるデザインとすることで本当の意味で木材のぬくもりを感じ取ることができるのではないでしょうか。


つづいて以下が木造軸組工法のデメリットです。

残念なポイント…  デメリット
  1. 室内に柱や梁の凹凸ができる
  2. 設計の自由度が高いとはいえない
  3. 将来の増築がスムーズに進まない場合がある
  4. 枠組み壁工法に比べると工期が長くなる
  5. 出来上がりの品質に差が出やすい
デメリット – 1. 室内に柱や梁の凹凸ができる

柱や梁を魅せるデザインにすると室内に柱の凹凸ができるので、スッキリしたデザインにはなりません。
「家具の配置」にこだわりがある方であれば、柱の凹凸と家具の配置のバランスが気になったりすることがあるでしょう。

デメリット – 2. 設計の自由度が高いとはいえない

柱や梁などの材料を切ったりつないだりすることで、長さをある程度自由に調節できます。敷地の形状に応じて柔軟に設計できるので、後に紹介する枠組壁工法と比べると設計の自由度が高い工法といえますが、材料の強度が高い鉄筋コンクリート工法や鉄骨工法と比べると設計の自由度が高いとはいえません。

デメリット – 3. 将来の増築がスムーズに進まない場合がある

全ての工法において言えることですが、将来のリフォームや増改築について、将来「ある特定の壁を取り外したい」と思っても、その壁が「耐力壁」であれば簡単に取り外すことができません。
もし10年20年後に増改築をする予定が決まっているのであれば、設計者や施工業者に将来の増改築の計画の可能性を伝えておくことで、リフォームや増改築がスムーズに進みます。

デメリット – 4. 枠組み壁工法に比べると工期が長くなる

部材のサイズが統一しにくく、建設現場で部材を加工してつくり上げる必要があります。
したがって、後で紹介する枠組壁工法に比べると工期が長くなります。
工期が長くなるということは、大工の人件費が増えることを意味し、建築コストが高くなります。

デメリット – 5. 出来上がりの品質に差が出やすい

建物をつくり上げる職人の技術力によって出来上がりの品質に差が出やすい傾向にあります。

枠組壁工法について

特徴

枠組壁わくぐみかべ工法は、北米の伝統的な工法です。
床や壁の骨組みとして使う材料が2インチ×4インチツー バイ フォーの断面であることから、「ツーバイフォー工法」とも呼ばれています。

近年では、2インチ×6インチの断面の材料をつかう「ツーバイシックス工法」も増えてます。

ココがいいね!  メリット
  1. 地震や台風に強い
  2. 冷暖房が効きやすい
  3. 安定した品質で建てることができる
  4. 木造軸組工法に比べ、工法が短い
  5. 室内に柱や梁の凹凸ができない
メリット -1. 地震や台風に強い

枠組壁工法は、床や壁といった「面」で建物を支えるのが特徴です。

「線」で建物を支える木造軸組工法と比べると、面で構成された枠組壁工法の方が建物全体の強度が高まり、地震や台風に強いのがメリットです。

メリット -2. エアコンが効きやすい

外壁や床、天井などの面と面をつなぎ合わせることで隙間が生まれにくくなり、気密性能や断熱性能が向上する工法のため、冷暖房が効きやすくなります。

メリット -3. 安定した品質で建てることができる

枠組壁工法では、用いられる角材の規格が統一されているだけでなく、釘の大きさや打ち込む間隔まで細かく決められています。そのため職人の技術や経験に左右されず、完成度にもバラつきが少ないため、安定した品質を期待することが出来ます。

メリット -4. 木造軸組工法に比べ、工法が短い

枠組壁工法は木造軸組工法に比べ、工法が短いということもメリットの一つです。材料が規格化されているので、現場での作業量が削減され、短い工期で家を建てることができます。

メリット -5. 室内に柱や梁の凹凸ができない

枠組壁工法では柱や梁が室内にみえることはないため、凹凸がないスッキリしたデザインにすることができます。

残念なポイント…  デメリット
  1. 幅の広い窓をつくりにくい
  2. 将来の増築がスムーズに進まない場合がある
  3. 結露が生じやすくなる
  4. 音が反響しやすい
デメリット -1. 幅の広い窓をつくりにくい

外壁についても面で構成する工法であるため、面の強度が下がるような幅の広い窓をつくりにくいです。

デメリット -2. 将来の増築がスムーズに進まない場合がある

将来「ある特定の壁を取り外したい」と思っても、その壁が「耐力壁」であれば簡単に取り外すことができませんので、もし10年20年後に増改築をする予定が決まっているのであれば、設計者や施工業者に増改築の計画についての可能性を伝えておくことで、将来のリフォームや増改築がスムーズに進みます。

デメリット -3. 結露が生じやすくなる

高気密・高断熱がゆえに、室内外の温度差が大きくなるため、結露が生じやすくなります。そのためカビやダニが発生しやすい環境になるので、結露対策や換気対策が必要です。

デメリット -4. 音が反響しやすい

気密性能が高いがゆえに、音が反響しやすいといわれています。
気密性能が高いと住宅内で発生した音が室内で反響し続けるため、騒音につながります。

吸音材であるグラスウールを一階と二階の間に入れることで下の階に伝わる伝播音を吸音させることができます。またグラスウールは壁面間にも入れることができるので、音の発生が気になる部屋の間仕切り壁に入れることで音の反響が緩和できます。

鉄筋コンクリート工法について

特徴

鉄筋コンクリート工法 ( RC造 )とは梁や柱などの骨組みを、鉄筋とコンクリートを用いてつくられた建物のことです。

鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めたものが骨組みになります。

「鉄筋コンクリート」の英語表記であるReinforcedレインフォースド Concreteコンクリート(レインフォースド コンクリート)の頭文字を取って「RC造アールシーぞう」と呼ばれることもあります。

材料となる「鉄筋」と「コンクリート」の性質は下記です。
●鉄筋……熱に弱く錆びやすい。引っ張る力(引張力)には強いが、上から押さえつける力(圧縮力)に弱い
●コンクリート……熱に強いが、引っ張る力(引張力)に弱い。上から押さえつける力(圧縮力)には強い

鉄筋は熱に弱いためコンクリートで覆うことで、熱から鉄筋を守ると同時に鉄筋が酸化するのを防ぎます。
コンクリートは上から押さえつける圧縮に対する抵抗力に強いものの、引張力に対して弱い。これを引張力に強い鉄筋で補強しています。
鉄筋とコンクリート、それぞれの短所をうまく補いあうことで、強度に強い鉄筋コンクリート工法が成立しています。

ココがいいね!  メリット
  1. 地震や台風にとても強く、防音性能に優れる
  2. 近所の火事を心配する必要がない
  3. 自由な間取りや形状をつくり出せる
メリット -1. 地震や台風にとても強く、防音性能に優れる

強度が高く頑丈な構造のため耐震性能や耐火性能が高いだけでなく、防音性能も優れています。
室内で発生した音が近所に漏れる心配をする必要がありません。

メリット -2. 近所の火事を心配する必要がない

コンクリートは耐火性能に優れているので、火がコンクリートに燃えうつりにくいという理由から「もらい家事」を防ぐことができます。 都会の住宅密集地に家を建てたとしても、おとなりの家の火事を心配することなく安心して住みつづけることができるでしょう。

メリット -3. 自由な間取りや形状をつくり出せる

コンクリートを使った流動的な工法のため、自由な間取りや形状をつくり出せるのも鉄筋コンクリート工法のメリットです。

残念なポイント…  デメリット
  1. 強い地盤の敷地が必要になる
  2. 冷暖房の効きが悪い
  3. 結露やカビが発生しやすい
  4. 建築コストが高い
  5. 将来の増築が難しい
デメリット -1. 強い地盤の敷地が必要になる

建物の重量が重くなるので、建物の重量を支えることができる地盤が強い敷地を確保する必要があります。つまり地盤の強さが足りない場合には、地盤を強くする工事(地盤の改良かいりょう)の費用がかかります。

デメリット -2. 冷暖房の効きが悪い

コンクリートは熱容量ねつようりょうが大きく熱伝導率ねつでんどうりつが高い材料であるため、外壁から室内に熱が伝わりやすいです。そのため「夏は暑く冬は寒く」なりやすく、冷暖房の効きが悪くなってしまう傾向があります。

熱容量ねつようりょう」とは、熱をどれだけ蓄えることができるかを表す指標です。
値が大きければ大きいほど、たくさんの熱を蓄えることができるので、熱容量の大きいコンクリートは「熱くなりにくく、冷めにくい」素材であるといえます。


熱伝導率ねつでんどうりつ」とは、熱の伝わりやすさを表す指標です。
熱伝導率の値が低い素材は「熱くなりにくく、冷めにくい」素材だということになりますが、コンクリートは熱伝導率が高い材料なので、「熱くなりやすく、冷めやすい」性質です。

これらのことから、「夏は熱くなりにくく、冬は冷めにくい」理想的な素材とは、「熱容量が大きく、熱伝導率の値が低い素材」と言えます。

しかしコンクリートは熱容量については大きいものの、熱伝導率についても「高い」材料なので、外壁から室内に熱が伝わりやすい傾向です。つまり「夏は暑く冬は寒く」なりやすいために、冷暖房の効きが悪くなってしまうのです。

デメリット -3. 結露やカビが発生しやすい

気密性能も高いため換気や給気対策をおこなわなければ、結露やカビが発生しやすい環境になりやすいです。

デメリット -4. 建築コストが高い

建築コストが高いのが一番のデメリットです。
建築コストは木造住宅で坪単価60万円、鉄筋コンクリート住宅で坪単価90万円あたりで、鉄筋コンクリート住宅は木造住宅の1.5倍くらい高い、というのが僕の肌感覚です。

デメリット -5. 将来の増築が難しい

強度が高く頑丈な構造のため、鉄筋コンクリートでつくった壁や床を壊すのは大変ですし、取り壊す際の騒音がとても大きいです。
将来、一部の壁や床を取り壊して増改築する可能性があるのであれば、その部分はコンクリート以外の材料で作っておいた方がいいでしょう。

鉄骨工法について

特徴

鉄骨工法とは、柱や梁などの骨組みに鉄骨を用いた建物のことです。

H型やの字型の断面をした肉厚の鉄骨材を主な骨組みとします。

「鉄骨」の英語表記であるSteel(スチール)の頭文字を取って「S造エスぞう」と呼ばれることもあります。

なお、鉄骨工法には「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」の2種類があります。
これらは使用する「鋼材の厚さ」によって分けられています。
一般的には鋼材の厚さが6mm以上のものを「重量鉄骨造」、6mm未満のものを「軽量鉄骨造」と呼びます。
資料:建築認定 3訂版 241ページ  発行:民事法務協会

重量鉄骨で建てることができれば建物の耐震性能が高いので安心感がありますが、鋼材が厚く重量が重いため、建物を支えるための地盤が硬い敷地が必要になります。
2階建ての一般住宅の場合では、軽量鉄骨で建てる場合が多いです。

ココがいいね!  メリット
  1. 間取りの自由度が高い
  2. 耐震性能に優れている
  3. 工期が短い
メリット -1. 間取りの自由度が高い

構造上、柱を少なくできるので木造の建物よりも間取りの自由度が高く、理想の家づくりがしやすいのが特徴です。
計画次第ですが、室内に柱が一つもない開放的で面積が大きなワンルームを作ることも可能です。

メリット -2. 耐震性能に優れている

材質だけで比較すると耐震性能に優れているので、家の構造の頑丈さを住み心地の指標にしている人にはおすすめと言えます。

メリット -3. 工期が短い

鉄骨工法は、材料のほとんどを工場でつくっているため、建設現場で材料の加工を行う場面が少ないです。そのため軽量鉄骨・重量鉄骨にかかわらず工期が比較的に短いのがメリットです。

残念なポイント…  デメリット
  1. 鉄骨の重量が重ければ、強い地盤の敷地が必要になる
  2. 遮音性能に劣る
  3. 将来の増築がスムーズに進まない場合がある
デメリット -1. 鉄骨の重量が重ければ、強い地盤の敷地が必要になる

鉄骨の重量が重いと、それを支える強い地盤が必要となるので、基礎工事のコストが高くなる傾向にあります。

デメリット -2. 遮音性能に劣る

骨組みに用いる鉄骨材料の強度が高いため、壁が薄くなる傾向があります。壁が薄い場合には十分な遮音対策を行わないと、生活音が外に漏れやすいです。

また、2階の床の厚さが薄いと生活音が下の階に響くので、十分な厚さの床をつくったり、2重床にしたりなどの対策が必要になります。
上記の対策と併用して、吸音材であるグラスウールを一階と二階の間に入れることで下の階に伝わる伝播音を吸音させることも有効です。

どのような対策をとるにしても、鉄骨造で家を建てるときは、設計者や施工業者に「遮音対策は万全にしたい」旨を伝えましょう。

デメリット -3. 将来の増築がスムーズに進まない場合がある

将来「ある特定の壁を取り外したい」と思っても、その壁が「耐力壁」であれば簡単に取り外すことができません。
また、鉄骨を切断するときには火花が飛び散ります。飛び散った火花がもとで火災が発生するかもしれませんので、火花が飛び散らないように切断箇所の周りを防護しながら慎重に増改築工事をしてもらうようにしましょう。


以上が、一戸建ての主流になっている4つの工法の特徴とメリット・デメリットでした。

この記事を読んだあなたが、マイホームで心地よく新生活をスタートできるように祈っております。

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