建築

『マイホームを買うべき』といえるための3つの条件

居住用の不動産 (マイホーム) をどのタイミングに購入するか迷っている方は多いと思います。

また、マイホームを購入して理想の生活を送っている人がいる一方で「家なんて買うんじゃなかった…」と後悔する方もいます。

いざ念願のマイホームを買ってもローンの返済が続いて資金的に苦しかったり、マイホームがあるため生活環境を変えにくかったりと、購入後に後悔する方が意外と多くいるようです。

そこで、建築士の目線でマイホームを買うべきといえる3つの条件を考えてみました。

結論として、マイホームを買うべきといえるのは下記の条件を全て満たした時です。

  1. 経済的に無理なく購入することができる状況にあること。
  2. 賃貸物件では実現できない「購入したい積極的な理由」が存在すること。
  3. 自分や家族のライフプランがある程度は固まっていること。

マイホーム購入をお考えの際の一助になれば幸いです。

1. 経済的に無理なく購入することができる状況にあること。

最近は頭金まで借りてフルローンで家を購入する人もいるようですが、個人的にはそんな無茶なことをするべきとは思えません。

不動産を購入すれば、多くの人は数十年にわたるローンを毎月、着実に返済していくことが求められます。

それは、「予想していなかった突発的な事態に直面しても、それに備えておけるレベルまで家計をコントロールできる人」にしかできない芸当だと思います。

仮に住宅ローン期間が30年だと仮定します。
35歳で家を買ったならば、30年後は65歳です。

65歳までの間には、働き手を含む家族の誰かが病気になったり、転職したり、災害に遭うなど、さまざまな出来事が起こり得ます。

誰にでも30年もの間には、一つや二つのトラブルに巻き込まれる可能性があるでしょう。

そして、自分にそれができるのか、客観的に見極めるためのベストな方法が、「まずは物件価格の2割の頭金を貯めてみること」です。

賃貸の家賃を支払いながら、2割の頭金を貯められる人なら、長い人生の途中で、何らかのトラブルに遭遇しても、きちんとローンを支払い続けられるでしょう。

つまり、2割の頭金が貯められるかどうかというのは、お金の有無の問題ではなく、「家計をコントロールできているか」というスキルの問題なのです。

マイホームを購入するときは、「無理してマイホームを購入する」ことではなく、「無理なくマイホームを購入する」ことができるかどうかを検討して、経済的に無理なく購入することができる状況にあることを確認しましょう。

2. 賃貸物件では実現できない「購入したい積極的な理由」が存在すること。

マイホームを購入する際には「購入したい積極的な理由」があることが不可欠です。

不動産を保有するというのは、それだけでかなりの維持費がかかります。

  • 土地と建物の固定資産税 ( 毎年1回、または4回に分割して支払う税金 )
  • 保険料 ( 地震保険、火災保険など )
  • 修繕積立費
  • 都市計画税 ( 都市計画法による市街化区域内に所在する土地と建物が課税対象 )

ちなみに我が家では、合計で年間50万円の維持費を支払ったり、貯めたりしています。

都市計画税については課税対象外の地域に住んでいる場合には税金がかかりません。


修繕積立費は自分で貯めておくだけですから、新築から15年〜20年は実質的な支出はありません。
このため、修繕やリフォームにかかる費用を「家を持つことのコスト」として認識していない人もいます。

しかし、一戸建てであれマンションであれ、ローンが終わるまでの30年間、なんの修繕や衛生機器の交換をせず住み続けることは不可能です。

特に15年を過ぎたあたりからは、内壁の塗装や壁紙の張替えの修繕、外壁の修繕、屋根の防水修繕、トイレの交換、給湯設備の交換が必要になったりと、あちこちの修繕が必要となってきます。

月1万円 ( 年12万円 ) を積み立てれば15年で180万円になりますが、実感としては、これは15年分の修繕費として「ぎりぎり最低限の必要な額」といった感じです。

これだけの額がローン返済に加えて必要になるわけですから、家を購入するなら、「それだけのコストをかけても建てたい」という積極的かつ具体的な理由が求められます。

では、「絶対に家を買いたいと思える理由」とは、どんな理由なのでしょうか?

私の考える「家を保有することの最も大きな価値 (理由)」は、圧倒的に自分好みの家に住めるという価値です。

家を保有すれば、マンションであってもリフォームやリノベーションで完全に自分仕様の家に作り替えることができるし、一戸建てを注文住宅として建てれば、賃貸に住むのとは全く違うレベルの自由度が手に入ります。

これが「家を保有すること」の最大の価値であり、反対に言えば、ここに価値を感じない人が家を買う必要はないと感じてます。

もうすこし具体的に言えば、例えば次のような希望は、自分の家を買わないと実現できないでしょう。

希望 – 1

・かけがえのない家族の一員である愛猫のため、室内の壁にキャッツウォークや猫専用のドアをつけたい。

・「猫の抜毛」対策として、掃除ロボットを導入し、ロボットが部屋を自由に行き来できるように、家全体を段差のないフラットな床にしたい。

・室内窓を設けて、愛猫がのびのびと家じゅうを巡ることができる、心地よい住まいを実現したい。

希望 – 2

・漫画や小説、ビジネス書など大量の本を収納できる「壁一面が作付けの本棚で囲まれた専用の部屋」が欲しい。

・日光が差すと文字が見辛くなるので、外壁には、あまり窓を設けないで欲しいけど、緑が好きなので中庭を作って、中庭を眺めながらソファに座って快適に読書を楽しみたい。

希望 – 3

・家にいる時は快適に過ごしたいので、ホテルのような落ち着いた色調の部屋にしたい。

・半袖でも過ごせるように、廊下を含めて家全体があたたかな家にしたい。

・健康に気を遣っているので、完全防音室のトレーニングルームを作りたい。

このように「賃貸ではまず手に入らない、こういう家に住みたい」という希望が具体的になり、かつ、それが自分の暮らしやすさや人生の豊かさに大きく影響すると考え始めたら、その時がまさに「家を買うべきタイミング」です。

こういった具体的な価値が明確であれば、少々維持費が掛かっても、何十年のローンを抱えても、家を保有することのメリットは非常に大きいと思います。

「猫が好きだから、家全体を猫が過ごしやすい仕様にしたい」などと言えば、周りの人には呆れられるかもしれません。

でも、そんな他人の声など気にする必要はありません。

自分にとってそれが日々の幸せの源泉となるなら、躊躇なく、そういう家を建てるなり、現在住んでいる家をリフォームすればいいでしょう。

反対に、そういった理由が何もないのに、「家賃がもったいないから買う」とか「買った方がお得だから買う」といった理由で家を購入するのは お勧めしません。

「得だから買う」というのは、バーゲン会場で買い物をする人のロジックです。

本当に価値のあるお金の使い方としては、「特に欲しい理由はないけど得だから買う」ではなく「すごく欲しい理由があるから、高くても買う」という形だと思います。

不動産はとても高く、何十年も買い手の家計を縛ります。それまでして買うものなのですから、「自分が不動産を保有したい理由はコレだ!」と言えるように言語化してみましょう。

3. 自分や家族のライフプランがある程度は固まっていること。

家を買うのに適したタイミングとは、自分や家族のライフプランを考えたとき、この場所に最低でも10年は住み続けるという目処が立った時です。

一般的なローン期間である30年というスパンで考えると、家を変えたくなる理由は結構たくさんあり得ます。

  • 転職をして働く場所が変わる
  • 海外赴任を打診される
  • 勤めている会社のオフィスが移転する
  • 周辺環境への不満
  • 子供の進学したい学校が離れたエリアにあり、その近くに引っ越したい
  • 家族の誰かが体調を壊し、治療に便利な場所や、体調を管理しやすい場所に引っ越したい
  • 結婚や離婚、子供の数についての見通しの違いなどで、部屋数や部屋面積が変わる
  • 親の介護や、親に育児を手伝ってもらうため、便利な場所に引っ越したい
  • 住宅ローンの支払いが困難になった

家は30年もの借金をして買うものですから、本当は向こう30年のライフプランを見越して購入するのが理想ですが、そんなことは誰にも不可能です。

ですが、できれば最低でも10年くらいは見通せている、というタイミングで購入の判断をするのがいいのかなと思います。

家を買わせたい不動産会社は「住まなくなれば売ればいい」「便利な場所ならすぐ貸せる」と言いますが、いったん購入した家を出るのは、想像以上に大変なことです。

家を買えば多くの人は、賃貸に住んでいた頃とは全く違ったレベルで家具や家電に投資するので、短期間しか住まずに転出するのは多大な無駄を伴います。

思ったほどすぐに貸せない、売れない場合もあるし、そもそもローンが残っている抵当権付き物件を売ったり貸したりするのには金融機関の許可が必要なのにそれさえ知らない人がいます。

私の知り合いに、憧れのマイホームを購入した矢先に転勤を命じられたとても不運な方がおります。

その方は大企業に勤めていたので、いつかは自分にも転勤の命が下される可能性があることを心の中では思っていたそうでしたが、まさかそれがマイホーム購入直後にとは思ってもいなかったそうです。

人生では予想もつかないことが起こったりしますが、できれば最低でも10年くらいは見通せている、というタイミングで購入の判断をするのがいいのかなと思います。

まとめ

「マイホームを買うべき3条件を」振り返ってみましょう。

  1. 経済的に無理なく購入することができる状況にあること。
  2. 賃貸物件では実現できない「購入したい積極的な理由」が存在すること。
  3. 自分や家族のライフプランがある程度は固まっていること。

今まさに「買うべきか、もう少し後でもいいか」とお考えの方が、ベストな判断をする際のお役にたてれば幸いです。

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