建築

住宅トラブルのときは「評価住宅」か「保険住宅」であれば紛争処理支援センターで紛争処理手続きを支援してもらえます

いろいろな面倒な手続きをが終わって、やっと手に入れた理想のマイホーム。

入居して1ヶ月目になってから、壁にキズや不具合(瑕疵)を発見してしまった。
急いで住宅販売業者に連絡しんだけど、誠実に対応してくれない…

どうすればいいのだろうか?

受け取った住宅性能評価書と実際のおウチの性能が異なっていたから、住宅販売業者に連絡したんだけど、補修に応じてくれない場合はどうすれば良いのでしょう…?

その場合、所有する住宅が「評価住宅」または「保険付き住宅」であるなら、「指定住宅紛争処理機関」で紛争処理の支援を低料金(1万円/1件)で受けることができます。

※「指定住宅紛争処理機関」とは、各地域の弁護士会が中心となり、弁護士や建築士などの専門家が住宅の紛争の解決に向けて支援してくれる機関です。

※所有する住宅が「評価住宅」または「保険付き住宅」であれば、住宅のトラブルは指定住宅紛争処理機関による「専門家相談 (無料)」や「紛争処理」を受けることができます。

「評価住宅」か「保険住宅」であれば紛争処理支援センターで紛争処理を支援してもらえます

住宅の不具合の有無について、住宅販売業者との間で意見が食い違っており、話し合いによる解決が見込めない場合、弁護士に相談することもできますが、裁判になれば弁護士費用もかかり、紛争解決までの手続きに時間もかかります。

指定住宅紛争処理機関での紛争処理手続きは裁判とは異なり、弁護士費用がかかりません。
紛争処理の支援には手数料(1万円/1件)がかかりますが、裁判よりも紛争処理手続きをスムーズに進めることが可能です。

紛争処理手続きには、「あっせん」「調停」「仲裁」の3種類があります。

指定住宅紛争処理機関へのトラブルの依頼で利用できる紛争処理手続きは、「あっせん」「調停」「仲裁」の3種類です。

それぞれの概要は、次のとおりです。

あっせん

当事者双方の主張を確認したうえで、当事者間に歩みよりを提案することで、紛争の解決を図ります。
早急な解決が必要な場合や、技術的な争点が少ない場合に適しているとされています。

調停

当事者双方の主張を確認したうえで、争点を整理し、調停案を作成し、その受諾を勧告することにより紛争の解決を図ります。
技術的・法律的な争点が多く、あっせんでは解決が見込めない場合に適しているとされています。

仲裁

当事者双方の主張を確認したうえで、必要に応じて証拠調べや現地調査をし、仲裁委員が仲裁判断をおこなうことにより紛争の解決を図ります。当事者双方は、仲裁判断に従うことになります。

指定住宅紛争処理機関による紛争処理では、これらの紛争処理手続きを使い分けて、紛争の解決を図ります。

「あっせん」・「調停」には和解契約としての効力が発生し、仲裁には民事訴訟の確定判決と同じ効力が発生するとされています。

しかし、そもそも紛争当事者の双方の合意がなければ、あっせん・調停・仲裁を行なうことはできません。

つまり、紛争当事者の双方が合意に至らない場合には、紛争当事者は通常どおりの民事訴訟を提起することになります。


また、指定住宅紛争処理機関による紛争処理を申請しないで、初めから民事訴訟を提起することも当然可能です。

「評価住宅」または「保険付き住宅」であるかを確認しよう

裁判ではなく、まずは指定住宅紛争処理機関による紛争処理の支援を申請する場合には、所有の不動産が「評価住宅」または「保険付き住宅」なのかを調べる必要があります。(「評価住宅」「保険付き住宅」の両方に該当する場合もあります。)

「評価住宅」または「保険付き住宅」に該当したとしても、紛争の種類によって紛争処理の支援を申請できる場合と、できない場合がありますので、下記で詳しく解説していきます。

「評価住宅」であるかどうかの確認の方法

下記の書類を保管しているかどうかを確認します。

  • ①「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の両方を保管しているかどうか
  • ②「住宅性能証明書」を保管しているかどうか

①、②どちらかに該当していれば、評価住宅です

①不動産の引渡し時に住宅引渡し事業者から「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の両方を受け取っていれば評価住宅ですので、専門家相談や紛争処理を受けることができます。

②不動産の引渡し時に住宅引渡し事業者から「住宅性能証明書」を受け取っていれば評価住宅ですので、専門家相談や紛争処理を受けることができます。

⭕️補足:「住宅性能評価書」には2種類あるので注意が必要です。
設計時の図面を基に評価結果をまとめたものが「設計住宅性能評価書」です。
工事開始後、施工中・竣工時に数回に渡る現場検査と検査結果からまとめられたものが「建設住宅性能評価書」です。

・設計住宅性能評価書のみが手元にある場合 → 紛争処理支援を受けることができません。
・設計住宅性能評価書+建設住宅性能評価書 → 紛争処理支援を受けることができます。

⭕️補足:名称が似てますが「住宅性能評価書」と「住宅性能証明書」は同じものではありません。

建設住宅性能評価書または住宅性能証明書を紛失していた場合

住宅性能評価書を紛失した場合には、まずは「紛争処理支援センター」に連絡して紛失した場合の対応方法を相談しましょう。

外部サイトである指定住宅紛争処理機関へのリンクです。
住宅リフォーム・紛争処理支援センター

紛失した場合には住宅性能評価機関で再発行を受けられることが多いため、「住宅性能評価書または住宅性能証明書を発行した住宅性能評価機関」に再発行の手続きを取ることもできます。
再発行の手続きを取る際は、手数料(6,000円前後)がかかることが一般的です。

— 再発行を申請するところ —
1. まず初めに再発行を申請するところは住宅性能評価機関です。
2. どこの住宅性能機関に再発行を申請すれば良いのか分からない場合は、住宅引渡し事業者になります。

住宅性能評価機関は全国で120箇所あります。
つまり、ご自身のマイホームの住宅性能評価書または住宅性能証明書が、どこの住宅性能評価機関で申請・取得したのか分からない場合には、再発行を申請できません。

どこの住宅性能機関に再発行を申請すれば良いのか分からない場合は、住宅引渡し事業者に連絡して再発行手続きを代理してもらうか、どこの住宅性能機関に再発行を申請すれば良いのか聞き取りすることになります。

ですが、住宅販売業者との間でトラブルが発生してしまった場合、住宅販売業者に住宅性能評価書または住宅性能証明書を、どこの住宅性能評価機関で取得したのか連絡しづらいのが本音でしょう。

ですので、住宅性能評価書を紛失した場合には、まずは紛争処理支援センターに連絡して紛失した場合の対応方法を相談しましょう。

「評価住宅」に該当する場合、指定住宅紛争処理機関で紛争処理として取り扱うことができるケース

指定紛争処理機関で対応してもらえる案件は、次のような場合です。

  • 住宅に不具合があり、補修方法や補修費用などについて話し合いがまとまらない場合
  • 健康被害が生じて、補修方法や補修費用などについて話し合いがまとまらない場合
  • 住宅の請負契約又は売買契約に関連するトラブル

「評価住宅」に該当する場合でも、指定住宅紛争処理機関で紛争処理として取り扱うことができないケース

次のような紛争については、紛争処理を支援してもらえません。

  • 建設工事完了後1年を超えてから結んだ評価住宅の売買契約に関する紛争
  • 評価住宅を転売により取得した際の売買契約に関する紛争
  • 近隣住民との間の紛争
  • 評価住宅の賃貸人と賃借人との間の紛争

評価住宅に該当し紛争処理を受けることができる方

紛争処理を申請できるのは、次のような方です。

  • 建設工事の完了の日から起算して1年未満の住宅を取得した買主
  • 建設工事完了後1年以内に買主が購入し、買主がその住宅を未入居で販売した場合で、その住宅を取得した転得者

評価住宅に該当するが、紛争処理を受けることができない方

下記に該当する方は紛争処理支援の申請ができません。

  • 建設工事の完了の日から1年以上の住宅を取得した人
  • 建設工事完了後1年以内に買主が購入し入居したが、何らかの事情で買主がその住宅を販売し、その住宅を取得した転得者

確認する点
・建設住宅性能評価書の交付を受けていたかどうか
・建設工事完了後1年以内に購入したかどうか
・転売で取得した場合は、不動産の売主がその不動産に入居していたかの有無

「保険付き住宅」であるかどうかの確認の方法

保険付き住宅とは、住宅瑕疵担保責任保険が付された新築住宅です。
不動産の引渡し時に住宅引き渡し事業者から「保険付保証明書」を受け取っていれば保険付き住宅です。

⭕️補足:住宅の建設工事が完了して引渡日が決まったら、「保険を申し込んだ事業者」から保険法人へ保険証券発行の申請が行われます。発行の申請後は、事業者に対して保険証券と保険付保証明書が発行されますので、保険付保証明書は事業者から手渡されることで取得することになります。なお、保険証券は住宅事業者が保管します。

※「保険を申し込んだ事業者」= 請負契約に基づいて引渡す住宅の場合は建設業者。売買契約に基づいて引渡す住宅の場合は宅建業者。

・保険を申し込んだ事業者の例
建売 → 宅建業者または建設業者
ハウスメーカー → ハウスメーカー
注文住宅 → 建設業者
中古住宅・マンション → 宅建業者

もし仮に、住宅を購入したのがハウスメーカーで、その会社が住宅瑕疵担保責任保険に加入していた場合は、ハウスメーカーから建物の引き渡し時に保険付保証明書を受け取ることになります。

保険付保証明書を紛失していた場合

保険付保証明書を紛失した場合には、まずは紛争処理支援センターに連絡して紛失した場合の対応方法を相談しましょう。

下記は外部サイトである指定住宅紛争処理機関へのリンクです
住宅リフォーム・紛争処理支援センター

紛失などの場合の再発行は、「被保険者である事業者」を通じての発行となります。

保険付保証明書を紛失した場合で、建物を購入した会社(保険を申し込んだ事業者)に連絡するのに抵抗があるようであれば、まずは紛争処理支援センターに連絡して紛失した場合の対応方法を相談しましょう。

指定住宅紛争処理機関で紛争処理として取り扱うことができるケース

指定紛争処理機関で対応してもらえる案件は、次のようなものです。

  • 住宅に不具合があり、補修方法や補修費用などについて話し合いがまとまらない場合
  • 健康被害がある場合で、補修方法や補修費用などについて話し合いがまとまらない場合
  • 住宅の請負契約又は売買契約に関連するトラブル

⭕️補足:保険付き住宅の紛争処理の対象は、住宅を供給した建設業者又は宅建業者が加入した住宅瑕疵担保責任保険の対象となる構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分をめぐる争いに限られません。それ以外の争いも対象になります。

指定住宅紛争処理機関で取り扱うことができないケース

次のような紛争については、取り扱うことができません。

  • 住宅瑕疵担保責任保険が付されていない住宅のトラブル(保険付き住宅でない場合のトラブル)
  • 保険付き住宅を転売で取得した場合の売買契約に関する紛争
  • 近隣住民との間の紛争
  • 保険付き住宅の賃貸人と賃借人との間の紛争

保険付き住宅に該当し紛争処理を受けることができる方

住宅瑕疵担保責任保険が付された新築住宅の買主
※保険期間(10年間)が満期を迎えていても紛争処理を受けることができます。
しかし、住宅瑕疵担保責任保険法人が紛争処理の手続に関与することはありません。
つまり、保険期間(10年間)が満期を迎えている場合は、事業者が瑕疵の補修をしても保険の適用を受けることができませんので、紛争処理の支援を受けても、事業者の合意を得ることは難しいでしょう。

転売で取得した転得者で、保険期間(10年間)が満期を迎えていない場合
⭕️補足
新築住宅を販売した建設業者又は宅建業者を相手方として、紛争処理を申請することになります。
ですので、新築の保険付き住宅を転売により売却した売主を相手方とすることはできません。
⭕️転売された不動産の紛争処理の対象は、建設業者が交付した保証書の保証内容をめぐる争いに限られます。
⭕️紛争処理が利用できる期間は、保証書の保証期間内です。保証書の保証期間は、転得者へ住宅を引き渡した日から、住宅瑕疵担保責任保険の保険期間の満期日までになります。したがって、保証期間が満期を迎えた後は、紛争処理の申請はできません。

保険付き住宅に該当するが、紛争処理を受けることができない方

転売で取得した場合で、保険期間(10年間)が満期を迎えている場合

「評価住宅」「保険付き住宅」どちらかに該当したならば、指定紛争処理機関に連絡しよう。

僕の解説がわかりにくいのかもしれませんが、「取り扱うことができる事案の条件」や「紛争処理の申請権限の条件」など複雑です。
ご自身が直面している問題が、紛争処理の支援を受けることができる条件に当てはまるのかは指定紛争処理機関に連絡して確認しましょう。

下記は外部サイトである指定住宅紛争処理機関へのリンクです
住宅リフォーム・紛争処理支援センター

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