こんにちは。
僕は宮城県の亘理町で「一級建築士事務所さざんか」という設計事務所を営んでいる、代表の佐々木 信雄と申します。
亡くなった父が調査士でしたので、僕も調査士になることを目指していて、2022年 (令和4年) の土地家屋調査士試験を受験しようと考えています。
今年で4回目を迎える土地家屋調査士試験。
例年は試験の申し込みが終わった8月ころから試験勉強を始めていましたが、今年は3月から始めています。
試験は10月に実施されるので3月から試験勉強を始めれば7ヶ月を試験勉強に費やすことができます。好調なスタートを切れたと思っていましたが、勉強を進めていくうちにある疑問が生まれました。
「『一部地目変更・分筆登記』は報告的登記か?それとも形成的登記なのか?」
分筆登記自体は、共有地であれば申請人全員から申請しなければならない形成的登記に分類されますが、土地の一部の地目が変更したことによる分筆登記の場合でも形成的登記に分類されるのでしょうか?
いろいろ調べた結果、一部地目変更・分筆登記は報告的登記と解されていました。
一筆の土地の一部が別の地目となったときは、表題部所有者または所有権の登記名義人は、一月以内に一部地目変更による分筆の登記をしなければならない。(不動産登記法 第37条 第1項が準用される)
また、共有名義の一筆の土地について、土地の一部が別地目となった場合における「一部地目変更及び分筆」の登記は、法第39条第2項による登記官の職権登記の趣旨及び土地の具体的な分割方法も客観的に定まっているのであるから、報告的な登記として共有者の1人から当該登記の申請ができる。(登記研究367号 137項)
この記事では、今年も土地家屋調査士試験を受験する受験生の立場で「一部地目変更・分筆登記」の法的な性格について自分用の備忘録としてまとめています。
この記事を読むことで勉強に苦しんでいる方の悩みが少しでも晴れることを願っています。
それではまいりましょう。
報告的登記と形成的登記の違いについて
報告的登記とは「事実に基づく報告的な登記」のことをいい、形成的登記とは「所有者の意思に基づいて登記官が新たに登記記録を創設する登記」のことをいう。
各種の表示登記を報告的登記と形成的登記に分類してみる
土地・建物の各種の表示登記を報告的登記と形成的登記に分類すると下記になる。
※土地の分筆、合筆、分合筆登記は形成的登記だが、一部地目変更分筆登記は報告的登記に分類される。
申請義務の有無の観点から各種の表示登記を分類してみる
表示に関する登記は申請義務が発生する登記と、申請義務がない登記に分類することができる。
※土地の分筆、合筆、分合筆登記に申請義務は無いが、一部地目変更分筆登記は報告的登記と解されているため申請義務が課せられている。
一筆の土地の一部が別の地目となったときは、表題部所有者または所有権の登記名義人は、一月以内に一部地目変更による分筆の登記をしなければならない。(不動産登記法 第37条 第1項が準用される)
共有者の一人から申請できるかどうかの可否
表示に関する登記において、不動産に2人以上の共有者がいる場合、民法第251条及び第252条の規定により、共有不動産に変更を加える行為を行うときには共有者全員で申請することを要し、共有不動産の保存行為のときには共有者の一人から申請することができるとしている。
分類してみると報告的登記は共有者の一人から申請できる登記であり、形成的登記は共有者全員で申請しなければならない登記であることがわかる。
※土地の名義が共有の場合、分筆登記と合筆登記の申請は共有物の変更を加える行為に該当するため、土地の共有者全員で申請することになる。(民法 第251条)
※一部地目変更分筆登記は共有物の保存行為として、共有者のうちの一人から申請することができる。(民法 第252条ただし書)
※表題部所有者の更正登記については、真実の所有者以外の者は申請できない。(不動産登記法 第33条 第1項)
一部取り下げについて
申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じて、一の不動産ごとに作成して登記所に提供しなければならないが、不動産登記令 第4条 ただし書の規定により、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるとき、その他不動産登記規則 第35条の規定で定めるときは一の申請情報によって申請することができるが、一の申請情報によって二以上の申請がされたときは、二以上の申請のうちの一部を取り下げることが認められている。(不動産登記規則 第39条・不動産登記事務取扱手続準則 第28条 第4項)
※二以上の申請をした場合において、前の登記を取り消すことによって、後の登記が成り立たない場合には前の登記のみを取り下げることはできない。(分合筆登記)
※分割+合併登記の場合は、合併登記のみを取り下げることができるが、手続き上、分割登記のみを取り下げて、合併登記のみを申請することはできない。
※一部地目変更分筆登記は、一部地目変更登記のみを取り下げることができるが、分筆登記を取り下げて、一部地目変更登記のみを申請することはできない。
※合体後の建物についての建物の表題登記と合体前の建物についての建物の表題部の登記の抹消 (「合体による登記等」と総称される) は、一つの申請情報によって申請しなければならないものとされているので、合体後の建物についての建物の表題部の申請のみを取り下げることはできない。(不動産登記令 第5条 第1項前段)
※合体による登記等の申請と合体前の建物の所有者を合体後の登記名義人とする所有権の登記の申請は、一の申請情報によって申請しなければならい(不動産登記令 第5条 第1項後段)。
これらの登記は1個の手続きで完了しなければならないものであるから、所有権の登記の申請のみを取り下げることはできない。
相続における表示登記の代位申請において戸籍謄本の提供の範囲
被相続人名義の土地について相続人から表示に関する登記を代位申請する場合において、添付情報として提供すべき、相続があったことを証する情報の一部として提供する戸籍謄本は、①被相続人が死亡して相続が開始したことを確認できる戸籍の謄本、②申請人が相続人であることを確認できる戸籍の謄本、③申請人以外に相続人がいないことを確認できる戸籍の謄本があるが、報告的登記と形成的登記の場合では戸籍謄本の提供の範囲が異なるので下記に分類した。
①被相続人が死亡して相続が開始したことを確認できる戸籍の謄本
②申請人が相続人であることを確認できる戸籍の謄本
被相続人名義の不動産を相続人から『変更、更正または一部地目変更分筆登記などの報告的的登記』を代位申請する場合において相続があったことを証する情報の一部として提供する必要がある戸除籍謄抄本は、①被相続人が死亡して相続が開始したことを確認できるもの、②申請人が相続人であることを確認できるものを提供する。
①被相続人が死亡して相続が開始したことを確認できる戸籍の謄本
②申請人が相続人であることを確認できる戸籍の謄本
③申請人以外に相続人がいないことを確認できる戸籍の謄本
被相続人名義の不動産を相続人から『分筆登記や合筆登記などの形成的登記』を代位申請する場合において相続があったことを証する情報の一部として提供する必要がある戸除籍謄抄本は、①被相続人が死亡して相続が開始したことを確認できるもの、②申請人が相続人であることを確認できるもの、③申請人以外に相続人がいないことが確認できるものを提供する。
相続は死亡により開始するので、被相続人が死亡して相続が開始したことを証するために、被相続人の死亡の事実が記載された戸籍簿の謄本が必要になる。
戸籍簿に記載されているのが被相続人のみだった場合は、死亡の事実が記載された除籍簿の謄本が必要になる。
被相続人名義の不動産について相続人が表示に関する登記を代位申請する場合に、代位申請している相続人に申請権があることを証明するためには、その者が被相続人の推定相続人であることに加えて、被相続人の死亡当時、現に相続資格を有していることを確認する必要がある。
これを証明するのが、「申請人である相続人の現在の戸籍謄本」である。
これにより、被相続人の戸籍上の記載と相続人の現在の戸籍上の記載から、生年月日や氏名、父母の氏名および続柄、婚姻事項などを読み取ることで、被相続人と相続人との関係性が確認され、かつ、被相続人の死亡当時に当該相続人が生存していることが確認できる。
申請人以外に相続人がいないことを証明するために、生殖能力があるといわれる10歳くらいから死亡までの戸籍を提供して、申請人以外に相続人となることができる子供の存在がないことを証明する必要がある。
※婚姻すれば夫婦につき新しい戸籍が編製されるので、被相続人が婚姻している場合には、婚姻前の除籍謄本が必要になる。
※他の市区町村に転籍した場合には、転籍前の除籍謄本も必要となる。
※戸籍法の改正によって戸籍が改製された場合には、改製原戸籍の謄本が必要となる。
※被相続人の子である相続人が被相続人の死亡日よりも前に死亡している場合には、死亡した相続人の子が代襲して相続権を取得する可能性があるので、死亡した相続人の戸籍、除籍の謄本が必要となる。
※相続放棄をした相続人は相続開始の当初から相続人ではなかったことになるので、相続放棄をした相続人がいる場合には、家庭裁判所が発効する相続放棄申述受理証明書を添付する。
この場合、相続放棄をした相続人の現在の戸籍の謄本は、被相続人の戸除籍謄本により相続人であることがわかる場合には添付の必要はない。(相続放棄をした相続人の子は、相続権を代襲して相続することはないため)

コメント